結論:モードを固定しないと、数字は比較できない
「AI検索で自社がどう見えているか」を測るとき、多くの人が気にするのは何を聞くかです。しかし実務でより頻繁に事故を起こすのは、どのモードで聞いたかのほうです。
いまのChatGPTやPerplexityは、ひとつのサービスの中に複数の動作モードを持っています。通常の検索、Deep Research(リサーチモード)、エージェントモード。これらは「同じAIの丁寧版・簡易版」ではなく、参照する情報源の範囲そのものが違う別の仕組みです。先月と今月でモードが違っていれば、その2つの数字は単純には比較できません。
Perplexity:モードごとに「探しに行く場所」が違う
Perplexityには通常の検索のほか、Pro Search、Research(リサーチ)といったモードがあります。さらに「Focus(探索対象の絞り込み)」という機能があり、Web・学術・金融・自分のファイルなどどの情報源の集合を探しに行くかをユーザー側で指定できます。[2] 探す場所が違えば、返ってくる引用元が変わるのは当然です。
Researchモードにいたっては、質問に一度答えて終わりではありません。公式の説明によれば数十回の検索を行い、数百の情報源を読み込み、調査の途中で学んだことに応じて調査計画そのものを組み替えながらレポートを組み立てます。回答が返るまで4〜5分かかることもあります。[1]
通常検索とは、かけている手間も参照範囲もまったく違う仕組みだということです。
ChatGPT:Deep Researchは「検索」ではなく「調査」
ChatGPTも同様です。通常の検索は、最新のWeb情報を素早く拾って短い要約を返す仕組みです。[4] 一方Deep Researchはエージェント型で、調査計画を立て、検索し、情報源を評価し、クエリを練り直して、また検索するという多段のプロセスを自ら回します。[3]
つまり「単にじっくり考えてくれるモード」ではなく、検索の回数も範囲も別物ということです。Deep Researchで自社名が出てきたからといって、一般のユーザーが通常の検索で見る画面に出てくるとは限りません。
実際に起きた事故:気づかないうちにモードが変わっている
当社の診断業務でも、実査を始めようとしたところPerplexityのアカウント既定がエージェントモードになっていたことがありました。設定を変えた記憶がなくても、サービス側のアップデートで既定が切り替わることがあります。
やっかいなのは、モードが変わっていても画面上は普通に答えが返ってくる点です。エラーも警告も出ません。気づかないまま記録すれば、その回のデータだけ別の仕組みで取った数字が混ざります。投入前にモードを目視で確認する以外に、これを検知する方法がないというのが実感です。当社では質問ごとに新規スレッドを立て直す運用でリスクを下げています。
では、どのモードで測るべきか
当社の答えは「既定のまま・通常モードで測る」です。判断の軸はひとつで、診断の目的が『一般ユーザーが実際に見る回答の再現』だからです。見込み客の大半は、わざわざモードを切り替えて自社を探したりしません。
実務で固定しているルールは次のとおりです。
- モデルは既定のまま。上位モデルの手動選択はしない
- Deep Research・エージェント系の高度機能は使わない
- Perplexityは通常検索モードに固定。質問ごとに新しいスレッドを立て、毎回モードを確認する
- 法人向けプラン(ChatGPT Businessなど)は使わない。社内データ連携で回答が変わり、一般ユーザー環境から離れるため
- 推薦・比較の質問は一時チャットで。過去の履歴を拾って結論が反転することがあるため
- 測定時のモデルバージョンを毎回記録する。既定を固定していても、既定の中身が入れ替わるため
有料プランに入る意味は、上位モデルを使うことではなく回数制限を外すことにあります。ここを取り違えると、お金を払ったぶんだけ実態から離れた数字が出ます。
ただし、例外の議論はあります
「既定モードだけでよいのか」には反論もあります。BtoBの購買では、意思決定者が実際にDeep Researchを使って候補企業を比較調査するケースが現実に存在するためです。この指摘は当社も受けており、主軸は既定モード固定のまま、BtoB案件では高度機能での測定をオプションとして併走させるという整理にしています。
いずれにせよ大事なのは、どちらが正しいかではなくどちらで測ったのかを記録し、途中で変えないことです。
チェックリスト
- 自社(または代行業者)のAI可視性レポートに、測定に使ったモードとモデルが明記されているか
- 先月と今月で、そのモードが変わっていないか
- 「AIで1位でした」というスクリーンショットは、通常モードで撮られたものか
3つとも答えられないレポートは、月次の比較には使えません。
まとめ
AI検索の測定がずれる原因は、大きく3つあります。どの経路で聞いたか(Web版かAPIか)、どう聞いたか(質問の設計と試行回数)、そして本記事のどのモードで聞いたかです。
技術的な対策を打つ前に、まず測り方を固定する。順番を逆にすると、施策の効果もモデルの気まぐれも区別がつかなくなります。
出典
[1] What is Research mode? ― Perplexity Help Center(2026年7月16日更新)
[2] What is Search Focus? ― Perplexity Help Center
[3] Research with ChatGPT ― OpenAI
[4] Deep research in ChatGPT ― OpenAI Help Center
・モード固定の運用ルールおよび既定がエージェントモードになっていた事例は、当社の診断実務における実施ルールと実査記録によります(案件名は非公開)
監修:Gov Sync株式会社 AI検索最適化サービス担当 水野 明日香/最終更新日:2026年8月20日
