2026年8月2日、EUでAIの「透明性義務」が始まった
今週、AIをめぐる規制が一つの節目を迎えました。EUのAI Act(AI規則)第50条が定める透明性義務が、2026年8月2日から適用開始となったのです。[2]
チャットボットなど人と直接やり取りするAIには「AIであること」を利用者に明示する義務が課され、AIが生成した音声・画像・動画・テキストには機械可読な形でのマーキングが求められます。違反した場合の制裁金は最大1,500万ユーロ、または全世界売上高の3%のいずれか高い方。決して小さな規制ではありません。[2]
この規制自体はEU域内向けですが、背景にある問題意識――「AIが生成する情報は、放っておくと不正確になりうる」という前提は、日本企業にとっても他人事ではありません。
AIの「誤情報」がもたらす実害
AIが確信ありげに、しかし事実と異なる内容を出力してしまう現象は「ハルシネーション」と呼ばれます。米Forbesが2026年5月に報じた記事によると、企業におけるAIハルシネーションの被害額は世界で約670億ドル規模と試算されており、1件あたりの平均損失は440万ドル、すでに組織のほぼ半数がその損害を経験しているといいます。[1]
さらに従業員は、AIの出力を裏取りする作業に週4時間以上を費やし、技術的な手戻りで年間51日分の労働時間を失っているとの推計もあります。それでいて「AIを重要な経営判断に信頼できる」と答えた従業員はわずか9%にとどまりました。[1]
これは主に社内利用(AIに業務判断をさせる場面)でのリスクですが、構図はAIが「あなたの会社」を紹介する場面でも同じです。AIは自社が発信していない情報を、他の情報源から推測・補完して埋めようとします。その補完が事実と違っていても、AIは自信ありげに答えてしまいます。
情報を出していない会社ほど、AIに「補完」される
弊社が2026年8月に実施した自社調査(国内格安SIM大手4社を対象に、ChatGPT・Gemini・Perplexity・Claudeへ同一質問を計12回実施)でも、構造化データ(JSON-LD)が未実装だった企業は、AIの回答での登場率が4社中最も低い結果となりました。[3]
AIに事業内容や強みを正確に机上に乗せてもらうには、まず自社側が「AIが読み取れる形」で情報を出しておく必要があります。逆に言えば、情報を出していない部分は、AIが他社の情報や第三者メディアの記述をもとに埋め合わせてしまう余地がある、ということです。
まとめ:規制の有無にかかわらず、やることは同じ
- EUのAI Act透明性義務は2026年8月2日に適用開始。違反時の制裁金は最大1,500万ユーロまたは世界売上高3%
- AIハルシネーションによる被害は世界で約670億ドル規模、1件平均440万ドルとの試算がある
- AIは自社が発信していない情報を他の情報源から補完する。構造化データなどでAIに正確な一次情報を渡しておくことが、誤情報リスクを下げる直接的な対策になる
[1] The Real Cost Of Enterprise AI Hallucinations ― Forbes(2026年5月28日)
[2] Is it a bot? EU AI Act transparency rules take effect 2 August 2026 ― Travers Smith(2026年7月28日)
[3] 自社実測(2026年8月3日実施)。詳細は「格安SIM大手4社で検証:AIにおすすめされる会社・されない会社の差」参照
監修:Gov Sync株式会社 AI検索最適化サービス担当 水野 明日香/最終更新日:2026年8月4日
