結論:自治体の生成AI対応は「使う側」に偏っている
総務省の調査によると、生成AIを導入済みの自治体は都道府県で87.2%、指定都市で90.0%にのぼります。[1] 一方で、自治体サイトの情報が生成AIの回答に正しく引用されているかというと、そちらの対策はまだ手つかずのところがほとんどです。「AIを使って業務を効率化する」動きと、「AIに正しく参照される情報を発信する」動きは、似ているようで別の話です。この記事では、公開されているデータをもとにその違いを整理します。
導入率は高い。ただし中身は「庁内業務の効率化」が中心
総務省「自治体における生成AI導入状況」(令和7年6月30日版、令和6年度12月31日時点調査)によれば、生成AIを導入済みの団体は都道府県87.2%・指定都市90.0%・その他市区町村29.9%です。[1] ただし活用事例の内訳を見ると、最も多いのは「あいさつ文案の作成」(875件)、次いで「議事録の要約」(755件)、「企画書案の作成」(638件)、「メール文案の作成」(635件)で、上位はいずれも庁内の文書作成業務です。[1] つまり導入率の高さは、住民がAIで自治体情報を調べたときの見え方とは直接関係がありません。
住民対応でも成果は出ている
もちろん住民対応の分野でも生成AI活用は進んでいます。渋谷区は2025年3月に生成AIチャットボットを公開し、2か月で累計10万件のQ&Aを処理、解決率77%という結果を公表しています。[2] 佐賀市は2025年2月に生成AIとRAG(検索拡張生成)を組み合わせた「AIスタッフ総合案内サービス」を稼働させ、導入から4か月で電話問い合わせが15%減少したとしています。[3] これらは「住民からの質問にAIが答える」仕組みへの投資で、成果も明確です。
見落とされがちなのは「他社のAIに聞かれたとき」の備え
自治体が自前で用意したチャットボットとは別に、住民は普段使っているChatGPTやGemini、GoogleのAIモードにも同じように行政手続きや制度を聞きます。この場合、回答の元になるのは自治体が管理していないAIであり、その回答が自治体サイトの一次情報をどこまで正しく参照しているかは、また別の問題です。
この点について、都内自治体のDX支援にあたるGovTech東京は2025年7月に公開した実務報告の中で、「様々な自治体サイトのアクセス解析をしていると、生成AIからサイトへの流入がじわじわ増えている実感はあるものの、必ずしも自治体の情報ばかりが引用されているわけではないのが実状」と述べています。[4] AIからの流入自体は増えているが、そこで引用される情報源が自治体の公式ページとは限らない、という指摘です。
AIに正しく参照されるための3つの実務ポイント
同報告では、自治体サイトが生成AIに正しく理解・引用されるための取り組みとして、以下の3点を挙げています。[4]
- 見出しの適切な構造化:h1→h2→h3の階層を飛ばさない、1つの見出しに複数の内容を詰め込まないなど、AIが情報の重要度・関連性を把握しやすい構成にする
- UXライティング:「当該年度における特例措置を実施いたします」のような行政特有の硬い表現を避け、「今年度の支払い期限を延ばせます」のように平易な表現・具体的な数値・条件の明示に置き換える
- 構造化データマークアップ(JSON-LD):FAQPage(よくある質問)、HowTo(手続き手順)、Event(イベント情報)、Grant(補助金・助成金制度)など、自治体コンテンツに対応したSchema.orgのタイプでページ内容を明示的に記述する
これらはいずれも、住民にとって分かりやすいページ作りと重なります。AIへの対応が、結果的に人間にとっても読みやすい情報設計につながるという点が実務上のポイントです。
まとめ
- 自治体の生成AI導入率は都道府県87.2%・指定都市90.0%と高いが、主な用途は庁内文書作成などの業務効率化
- 渋谷区・佐賀市のように住民対応向けチャットボットで成果を上げている自治体もあるが、これは自治体が管理するAIの話
- 住民が自分で使うChatGPTやGoogleのAIモードにどう答えさせるかは別の課題で、「自治体サイトへのAI流入は増えているが情報源として引用されるとは限らない」という実務報告がある
- 見出しの構造化・平易な表現・構造化データマークアップの3点が、AIに正しく参照されるための基本的な対策として挙げられている
[1] 総務省 情報流通行政局地域通信振興課・自治行政局行政経営支援室「自治体における生成AI導入状況」令和7年6月30日版(令和6年度12月31日時点調査)
[2] 渋谷区「渋谷区生成AIチャットボット」公表資料(2025年3月公開、2か月間の実績)
[3] 佐賀市プレスリリース「AIスタッフ総合案内サービス」(2025年2月稼働、稼働4か月時点の実績)
[4] GovTech東京 テックブログ「あなたのコンテンツはAI-Ready? 生成AIにスルーされない自治体ウェブサイトのつくりかた」(2025年7月4日公開)
監修:Gov Sync株式会社 AI検索最適化サービス担当 水野 明日香/最終更新日:2026年8月3日
